あれだけ悲惨な事故だったが、この本を読んだ後には別の感想を持ちました。
福島第一原発 ―真相と展望
著者のアーニー・ガンダーセン氏は元GEのエンジニア。
原発の設計などをされていたのですが、問題を認識して、その後
原発の危険性を主張しているために、アメリカではその職を失ったりした
という典型的な「政府、原発関係者に不都合な人物」
彼は、福島の事故発生後にチェルノブイリ並だとアメリカのニュースチャンネル
(CNN)で発言したという人です。
技術的な視点はさすがにプロ。
日本の大学などの教授で同様に反原発を唱えている方もいらっしゃいますが
やはりエンジニアリングというものは実際のモノを知らないと話になりません。
原発というものが、実際と同じサイズの実験装置(サンプル)を作れないために
ある程度、小型のもので安全性の実験をするそうです。
それでも、想定以上のリスクがわかるという事実。
ショッキングだったのは、福島第一原発の4号機のこと。
取り出してまだ日の浅い、使用済み核燃料の保存プールの危険性。
それはまさに「格納容器」の無い場所で核燃料物質を冷却しているという事実。
そもそも、誰もそういう事態を想定していなかったそうです。
だから非常に危険。
たまたま、4号機の作りが1号機より新しく、また色んな要因があって倒壊の危機を
何とか今まで持ちこたえているが、これがもしも破壊されたら即座に大多数の
犠牲者が出たということ。
実際、格納容器に入っている核燃料を冷却することはできるのですが、
プールに入っている状態=安定に冷却するために純水を使える状態、
が保持出来なくなったとき、その膨大なエネルギーを冷却できずに
発火し大惨事に至るという事実。
そして2号機は「燃料プールの即発臨界」だったという見解も非常に興味深い。
そして、何より、あの惨事の中で不幸中の幸いだったのは、風が海に向かって
吹いたこと。
もしこれが内陸に向かっていたら、大量に放出された放射性物質の影響は
どうなっていたか・・・という記述。
外部被曝の恐ろしさ、内部被曝の問題。
我々は安心しているのですが、まだ漏れ出してどこにあるのかわからない
核燃料物質の行方。
そして今も冷却は完了せず、放射性物質を大気や海中、森林、河川に
放出して汚染し続けている事実。
内部被曝は時間が掛かりながら、人間の染色体を破壊して行きます。
それがガンになるわけです。
首都圏に住む私達は、政府や東電からこういうリスクを何一つ教えられず
危険に晒されていた、いや、現在も知らされていないのです。
事故の後、金属臭がした、というのは本当にそういう物質を吸気していたのでしょう。
福島のクルマのエアフィルタに大量の放射性物質が付着していたそうです。
私は福島ではありませんが、きっとうちのクルマのエアフィルタにも同様でしょうね。
食べ物、海産物、川魚、飛散した核燃料物質。
汚染された土、水。。。
最近、また福島で何度か余震があります。
今度同じような地震が来たら、津波が無くても即時に首都圏から脱出しようと
思いました。なぜなら、今の福島第一原発は全く安定していないのですから。
廃炉の問題、実質不可能な理由についても記載されています。
処理する場所も無く、放射線量が高すぎて人では作業できず、ロボットは未開発。
そもそも、半減期が人間の時間軸を遙かに超えるものを扱うということの危険性。
そして、福島の事故は科学者が未だかつて想像したことも無い世界。
日本でも、アメリカでもIAEAなどの原発関連はムラになっている。
ソビエト連邦のように、日本政府は隠蔽を行っているのか。。。
機会があったら最初の数章でも読むべき本だと思います。
とにかく福島第一原発の1号機などと同じ型の原発は絶対に再稼働してはならない。
それと、古い設計の安全性はシートベルトが無くても良かった昔のクルマの
レギュレーション(規制)同様に、危険極まりないという事実は知って欲しい。
では。